2015年12月31日

周波数安定度比較

今年も早いものでもう大晦日になってしまいました。
9月の末に慌てて何か書かなくちゃと生存証明を書いてから、
早3ヶ月です。

今年は、昨年の高精度病から脱却して新しいことを始めようと、前半は、AirBand受信機を作ったり、Arduinoを始めたり、IoTを気取ってWiFiモジュールをいじったり、蛍光表示管でGPS時計を作ったり、タッチパドルを作ったりしてハムフェアまでを迎えたのですが、ある時aitendoでNEO-6Mなる新しいGPSモジュールを見つけて、また高精度病復活となり後半を過ごしてしまいました。

更にお世話になっているOMさんからModulationDomainAnalyzer(MDA)なる面白い測定器を譲っていただき、昨年にも増して深みにはまってしまったというのがこの1年でした。

しかし、頭の中では漠然とわかっていたことが実際に色々とやっているうちに更に理解が深まり、これまでにやったことをあらためて測定を行い整理してみて、なるほど言われている通りだったんだということを知った有意義な1年でした。

何も新しいことはありませんが、実際に測定したデータで比較したものは今まで見たことがなかったので当局的にはとても新鮮でした。

また、周波数カウンタだけでは周波数の安定度は測れないということも初めて知ることができました。

そこで、今年最後の記事はXTAL、OSO、TCXO、OCXO(シングルオーブン)、OCXO(ダブルオーブン)、ルビジウムとNEO-6MというGPSモジュールのクロック出力の周波数安定度比較した測定データを並べてみました。
単なる測定器の写真データの比較ですが、ご参考にでもなればと思います。

俗に色々な文献で周波数の安定度は概略次のように言われています。

XTAL 10~5 TCXO 10~6 OCXO 10~8 ルビジウム 10~10 
セシウム 10~13以上

経時変化はこれの1桁上ほどの変化があるといわれています。
今回は、この初期性能の確認が目的です。

もちろんセシウムは持っているはずもないので確認できていません。

(1)XTAL 10MHz

XTAL 10MHz XTAL.jpg

XTAL 10MHz.jpg
適当な定数で組んでおり調整もしていないのできっちり10MHzではない



カウンタで見る限り、0.1Hz台以下での変動である

XTAL 10MHz MDA 1Hz.jpg
スパン1Hzでの周波数変動のヒストグラムです。これも1Hz以内に見えます。
標準偏差も200mHzを切っていますので、3σ(99.7%をカバー)で600mHz以内の変動ということになります。
結構優秀です。

XTAL 10MHz MDA 10Hz.jpg
スパン10Hzで比較的長時間見ると標準偏差500mHzになっています。それでも1.5Hz以内になります。
1.5×10~7の安定度というところでしょうか!?

XTAL 10MHz オシロ.jpg
1石で簡単に作った発振回路ですが結構きれいな波形が作れてます。

(2)OSC

OSC 12MHz .jpg
いわゆるXTALオシレータです。10MHzに近い手持ちが12MHzでした。130Hzほど低い発振です。


こちらは更に1桁低い動きに見えます。20秒間では約0.1Hz以内の変動です。

OSC 12MHz MDA 2Hz.jpg
スパン2Hzでのヒストグラムです。カウンタの測定値と違って結構動いています。標準偏差は約500mHzですから3σは1.5Hzですから、結果としてはXTALと同じ位の変動は幅となっています。

TCXO 12.8MHz オシロ.jpg
このオシレータの出力波形はノコギリ波に近い波形でした。

(3)TCXO

TCXO 12.8MHz.JPG
昔、秋月で売っていた京セラ製の12.8MHzのTCXOです。
これも20Hzほど低い発振周波数となっています。


これは優秀です。20秒間で10mHz以内の変動幅です。

TCXO 12.8MHz MDA 1Hz.JPG
スパン1Hzでのヒストグラムです。この測定では結構変動幅があります。標準偏差70mHzですので3σで約210mHzの変動幅を持つことになります。
2×10~8の安定性能ということになります。

TCXO 12.8MHz オシロ.JPG
このTCXOも出力波形はノコギリ波に近い形になっています。

(4)OCXO 5MHz(TOYOKOM製 シングルオーブン)

OCXO 5MHz TOYOCOM.jpg
昨年のハムフェアで仕入れたシングルオーブン型のOCXOです。

OCXO 5MHz.jpg
外部周波数可変端子はオープンでの発振周波数です。3.5Hzほど高くなっています。

さすがOCXOです。1mHz以内の変動幅で観測されています。

OCXO 5MHz MDA 1Hz.jpg
スパン1Hzでのヒストグラムです。TCXOと比較して非常に変動幅が小さくなっています。

OCXO 5MHz MDA 50mHz.jpg
スパンを50mHzで観測したときのヒストグラムです。標準偏差は9.6mHzですので、3σは約30mHzの変動幅ということになります。
3×10~8の安定度ということになります。

OCXO 5MHz オシロ.jpg
出力波形は、ほぼ矩形波のようです。

(5)OCXO 10MHz(MORION製 ダブルオーブン)

OCXO 10MHz MORION.jpg
ebayで仕入れたロシア製ダブルオーブンの10MHzOCXOです。日本ではオーディオ用標準信号としての用途で急騰しているようです。

OCXO 10MHz.jpg
これも周波数可変端子はオープンでの測定です。0.2Hzしかずれていません。


これも1mHz台での変動です。カウンタでは、シングルオーブンより動いているようにも見えます。

OCXO 10MHz MDA 1Hz.jpg
スパン1Hzでのヒストグラムです。

OCXO 10MHz MDA 50mHz.jpg
これはスパン50mHzでのヒストグラムです。標準偏差も約9mHzですのでシングルオーブンと大差はありませんが、発振周波数が2倍だということを加味すると変動幅は半分ということになります。

OCXO 10MHz オシロ.jpg
これは正弦波の出力波形です。

(6)ルビジウム 10MHz(FE5650)

ルビジウム10MHz.bmp
昨年調整したルビジウムです。0.0001Hzのずれですが、ここまでくるとカウンタの基準とどちらが正しいのかわからなくなります。


0.0006Hz以内の変動幅です。これも基準の変動との違いは見分けられません。

ルビジウム 10MHz MDA 1Hz.jpg
スパン1Hzでも変動幅が非常に狭く観測されています。

ルビジウム 10MHz MDA 50mHz.jpg
スパン50mHzでのヒストグラムです。標準偏差は1.7mHzです。3σで約5mHzの変動幅です。
5×10~10の安定度ということになります。
使用した周波数カウンタも、MDAも基準発信器はもうひとつのGPS制御されたルビジウム(LPRO-101)で、安定度は被測定ルビジウムと同じ程度と思われますので、これくらいの値になるとどちらの安定度を測っているのかわからないと思います。

ルビジウム 10MHz オシロ.jpg
これも出力波形は、正弦波です。

結論から言うと、XTALは言われているより1桁くらい良いのかな?という結果でした。後は大体言われているような性能でしょうか?!

しかし、どこまでの精度を要求するかにもよりますが、経時変動で1桁は動くことを考えると何か周波数標準がないと不便であることも事実ではないかと思います。
もちろん校正されたルビジウムがあれば1桁狂ってもmHZ台だと思いますので全く問題はないでしょう!
ただし校正されていることが前提となります。
ルビジウムも調整トリマがついており数十mHzは平気で動かせます。
ダブルオーブンのOCXOもたまたま開放で初期値は良かったのですが外部端子で数Hzは動きます。
どのくらいの精度があったのかは今では知る良しもありませんが、昔秋月からカラーバースト信号を基準にした10MHzの基準信号源がありました。実は当局も買っていたのですが、作らないうちにアナログTV放送がなくなってしまいました(笑)
XTALを使った周波数カウンタをいくつか作りましたが、こうしてみると作ったカウンタの基準を正しく合わせられないと何を測っているのかわからなくなります。
昨年、高精度病に罹っていったのはここに原因があったわけです。
周波数カウンタを合わせるのに、カウント桁数の多い周波数カウンタを購入して、それの基準周波数がかなりいい加減でこれを合わせるのにルビジウムをお借りして合わせて、それでもどんどん変化するので結局ルビジウムを購入して、カウンタも12桁まで読めるものだから100μHz台の変動が気になってしまってという泥沼です。
もし、購入した周波数カウンタが10mHzまでしか読めなかったらこれほど酷くはならなかったのではと思っています(笑)
購入した周波数カウンタでそこそこの安定度が得られても、実は正しく測っているとは限らないということもわかりました。
例えば、1秒間のサンプリング(ゲートタイム)で半分が15MHz、半分が5MHzであっても周波数カウンタの表示は10MHzとなるのです。
これを繰り返していた場合、カウンタはずっと10MHzを表示し続けます。

MDAはこの動きを観測できるのです。もちろん、MDAであってもサンプリングタイムには限界がありますから同じようなことが起きていると思います。周波数カウンタにも標準偏差を測定計算する機能があるのですが、一致しません。どちらも目安と思って使用するべきではないかと。
要は、使う側が理解して使わないと一喜一憂してしまうということだと思います。
当局はそれを知りました。

いずれにせよ、アナログTV放送がなくなった後の現在、基準に使える信号が見当たらず困っている局も多いのではないかと思いますが、ルビジウム精度を求めるのでなければ(0.1Hzが合わせられる)、比較的安く入手できる便利なものを見つけました。それが、aitendoで見つけたNEO-6MというGPSモジュールです。

通常GPSモジュールは1Hzの基準信号が出力されていることが多いのですが、このモジュールはスペック外ですが〜10MHz間での信号を出力することができます。
この信号はセシウムを基準とした周波数制御が行われているGPS制御で生成される信号なので基準信号になるのではと思ったのです。

サイト検索をすると当然既に検討された方が多くいらっしゃいます。このモジュールは内部基準が48MHzで動いているので整数分の一ではない10MHzはジッターが多くて使えないとの評価でした。逆に整数分の一の周波数なら使えるのではないかと思いました。例えば、8MHz、6MHz、4MHz、1MHzなど。
それで実施した実験での測定結果が以下の通りとなります。

(7)NEO-6M 8MHz

NEO-6M 8MHz.jpg
そこその周波数精度が出ています。


20秒間の観測では±50mHz程度の安定度です。

NEO-6M 8MHz MDA 50Hz.jpg
スパン50Hzでのヒストグラムです。なんと標準偏差約3Hzです。3σで15Hzの変動幅となります。
GPS制御されていますので中心周波数は6mHz程度のずれですが、基準に使うには変動幅が大き過ぎます。

NEO-6M 8MHz オシロ CLKOUT.jpg
出力クロックは、整数分の一でそれなりに安定しているようには見えるのですが....

NEO-6M 8MHz オシロ.jpg
先のクロックを2じのBPFを通して正弦波化した観測波形です。綺麗な正弦波になっています。

(8)NEO-6M 6MHz

周波数カウンタの写真を撮るの忘れました。


20秒間の動画では、±100mHz以内で変動しています。

NEO-6M 6MHz MDA 50Hz.jpg
これもスパン50Hzでのヒストグラムです。標準偏差2.6mHzを超えています。中心は16mHzのずれですが。

NEO-6M 6MHz オシロ.jpg
同じく、2じのBPFを通した波形です。

(9)NEO-6M 1MHz

NEO-6M 1MHz.jpg
1MHzです。


±20mHz以内の変動に見えます。周波数カウンタの校正用には使えるかもしれません。

NEO-6M 1MHz MDA 5Hz.jpg
スパン5Hzのヒストグラムです。標準偏差490mHzです。中心は2mHzのずれですが、周波数が1MHzということを考えると大きな変動幅だと思います。

NEO-6M 1MHz オシロ CLKOUT.jpg
BPFを作らなかったので出力波形のみです。矩形波です。

(10)NEO-6M 10MHz

IMG_0215.jpg

NEO-6M 10MHz.jpg
10mHz台が観測できます。


最大で±80mHzの変動といったところでしょうか!

NEO-6M 10MHz MDA 500mHz.jpg
スパン500mHzのヒストグラムです。標準偏差は約100mHzとこれまでの中では一番安定しています。3σは300mHzということになります。
中心周波数のずれも129μHzとなっています(たまたまだと思います)

NEO-6M 10MHz オシロ CLKOUT.jpg
クロックアウトです。同期が取れません。これまでの評価でジッターが多いというのはこのことだと思います。基準クロック48MHzで、約1/5でしかも整数分の一ではないためDDSの原理から複数の周波数が見れているのだと思います。しかし、サンプリングの定理からすればちゃんとしたBPFを通せば正弦波は得られるはずです。

NEO-6M 10MHz オシロ.jpg
2次のBPFを通した波形です。BPFはaitendoの10.7MHzのコイルを2つ使いました。
しっかりとした正弦波が出ています。出力も約1.5V(50Ω終端)出ています。

波形だけ見れば8MHzや6MHzのほうがよさそうですが、3σの値でHzオーダーで動いているのを見てしまうと中心周波数はそれほどずれていないので多分大丈夫だとは思うのですが、なんとなく気分が良くありません。

10MHzは、直接出力波形だけを見ると使えないと思うのですが、チャンとフィルタリングしてやれば3σで300mHzしか動いていませんし、中心周波数もかなりの精度となっていますので、周波数カウンタ合わせの基準信号としては100mHzいや10mHz台まで校正できる基準として使えるのではないかと思います。
このGPSモジュールは、aitendoで1980円しかしませんし1個50円のコイルが2個とコンデンサが1個、インバータロジックICが1個、抵抗が4個全部で基板を入れても2500円もかからないでしょう!
GPSモジュールのパラメータ設定にUSB-シリアル変換モジュールがいるので持ってなければ後500円位かかりますが、いずれにせよ安価で手軽な周波数基準信号が手に入ることになります。

回路図は掲載しませんでしたが、希望の方がおられましたら送付したいと思います。

校正の必要は全くありませんので、ローカルさんがいなくてもいつでも基準信号が手元にあることになり便利だと思います。もちろんGPS方式ですから、アンテナは窓際か窓の外に出す必要がありますが、合わせるときだけですから、何とかなるでしょう。

しかし、何故10MHzだけが良い結果になったのかはわかっていません。GPSモジュールのメーカーの人だけが知る原理があるのかもしれません。

もっと精度の高い基準の検討も色々やって入るのですが、まだこれといった結果が出ていないのでもうしばらく病気は続くのかもしれません。
早く治らないと、次の自作もできないし、ここしばらくOnAirもできていないのでとか思いつつ2015年もあと少しとなりました。
ここまで読んでいただいた方々には、かなりの長文でしたのご苦労をおかけしました。
御礼を申し上げます。
来年は長文にならないようにもう少しBLOGのアクティビティもあげられればと思います。
2015年、大変ありがとうございました。
来る2016年も宜しくお願い申し上げます。

posted by ja6irk at 18:55| Comment(9) | TrackBack(0) | QRP-HomeBrew