2022年05月17日

PockeTATOR衛星追尾Mac対応

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先日、簡易型ローテーター Pocke TATORの機能・性能改善を実施し、紹介しましたが、この機能のうちの衛星自動追尾については、Windowsでの対応しかできていませんでした。
しかし、衛星通信用のリグコントローラとしてMacのアプリを使用しておられる局長さんも多くおられ、Pocke TATORのユーザーさんにもおられました。
当局は、Macも使用していますが主はWindowsのため、Windowsでのコントロールとなっておりました。
そこで、機能性能改善もひと段落したので、Mac対応も検討することにしました。
とはいえ、どんなアプリがあるのかも知りません。
その道の方々にお聞きすると、MacDopplerなるものを使用されている局長さんが多いようでした。
調べてみると、1997年から存在している老舗のアプリのようで、今でもバージョンアップが行われており、対応リグとして 最新のIC-9700もできるようになっています。

スクリーンショット 2022-05-17 11.29.44.png

Windowsの場合、Pocke TATORの制御には、衛星軌道アプリであるCalsat32を使用させていただき、これが吐き出している衛星名、方向角、仰角のデータをPocke TATORコントローラーが制御できるように変換する中間アプリを自作して実現していました。

Calsat32toCTL2.jpg

さすがにMacのアプリを作る自信は全くなく、何とか実現の方法がないか探ることから始めました。
結論は、簡単で MacDopplerにはローターコントローラー機能が付属していました。
世界にある色々なローテーターに対応しているようです。
それぞれがどのような信号を使って制御しているのかの情報が少ないのですが、実際に信号の中身を観測して使えそうなものを選択することにしました。
条件はCOMポートを使用したシリアル通信で最低 方向角が読める方式です。
当局がダウンロードして使用している MacDoppler ver2.42では、20種類のローテーターが選択できるようになっています。

スクリーンショット 2022-05-17 11.28.02.png

まず、この中から使えそうなものを選択するわけですが、半分くらいは使えそうなシリアル信号が出ており、Windowsで作った中間アプリを作る必要はないことがわかり、ほっとしました。
その代わり、出力される信号が自作の中間アプリ Calsat32toCTLと全く同じものがあるはずもなく、PockeTATORコントローラーの制御信号の読み込み処理ソフトは改造が必要となりました。
まず、シリアルデータの読み込みの方法ですが、MacにUSBシリアルモジュールを接続して、WindowsPCにもUSBシリアルモジュールを接続して、TeraTermアプリでデータの内容を確認する方法をとりました。
Macに接続したUSBシリアルモジュールがプラグアンドプレイで何もせず認識してくれたのはよかったです。

Calsat32toCTL.jpg   SatEL.jpg
Windows用Calsat32tCTLデータ    採用したSatELのデータ

AutoTracker.jpg   EasyCom.jpg
AutoTrackerのデータ        EasyComのデータ

M2 AzEl.jpg   CD RAC825.jpg
M2 AzElのデータ          CD RAC825のデータ

こうして調べると、残念ながら、まず衛星名を出力しているものはありませんでした
次に、仰角がマイナスの時にデータを吐き出しているものもありませんでした
(つまり、衛星が視野範囲にある時のみデータが出力される)
衛星が視野範囲(aos in)に入る1分前に、その時点でのデータを吐き出しているものがありました。(ただし、仰角は0度:実際はマイナスであるが)
事前検討でこの3つ点にこだわったのは、衛星の仰角がマイナスの間に、その時点の方向角にアンテナを回して事前準備し0度以上になった時点で追尾の自動スタートをする、途中で追尾衛星を切り替えたときに衛星名でそれを認識し、追尾制御に齟齬が発生しないように切り替える、1分前にどの時点のデータが送出されるのは、追尾事前準備、自動スタートに使えそうだということです。
こうした事前検討の結果として採用したのは、SatELです。
後でよく考えると、Creative Design RAC825 が良かったかなと思ってます。
理由は、送出されるデータ量が常に一定でミスの発生が避けられそうだからです。
SatELでもデータ読み込みのミスは出ていないようなので、今更作り直す気はないのですが.....

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開発検証中の様子

実際にソフト改造をやってみて、衛星の自動追尾そのものは問題なくすんなりいったのですが、事前準備、自動スタートで苦戦しました。
理由は、Windows用自作中間アプリで送出されるデータをもとに、事前準備、自動追尾スタートの機能を作っており、MacDopplerから吐き出されるデータで同様の機能を実現するのに難儀したのと、元々Windows用に作った機能と交錯してしまって、迷路にはまってしまったからです。
継ぎ足し継ぎ足しでソフトを作ってきたので自分でも中身が見えなくなってます(汗;
事前準備、自動スタート機能を無しにしてもよかったのですが、マニュアルで事前にaos inの角度に事前設定しても、MacDopplerからの前のデータが残っていてそこに勝手に向いたり、何もなくて0度に向いたりです。
仮に、aos inが350度からで、0度になっていると350度まで回転してから追尾となり間に合いません。
それで何とかしようと、あ〜でもない、こ〜でもないと何度も何度もパステストを繰り返して時間ばかり過ぎていました。
基本的に現物思考で論理的思考ができないタイプなので、こういうのは不得意です。
結果として、Windows用に組み込んだルーチンなどを片っ端から外し、Mac用の専用ルーチンとして何とか動き始めました。
結果としての、今の動作は、MacDopplerで追尾衛星を選択し、コントローラーの追尾自動スタートボタンを押すと、aos in 1分前のデータで、その時点の衛星の方向に自動的に回転し停止待機、aos inした時点で自動追尾モードスタート、衛星の仰角が0度になった時点で自動追尾停止という機能となっています。

IMG_1037.JPG   IMG_1038.JPG
事前回転待機中           自動追尾中

Windows版は、仰角が0度でも衛星の方向角が変化すれば追尾していますが、MacDopplerからは、仰角マイナス時はデータが送出されないので認識手段がなく、0度になった時点で追尾停止の仕様となっています。
0度になってからの方法角の変化は少ないので実用上の問題は殆どないのではないかと思っています。

まだ完全ではないと思いますが、色々な衛星のパスでのテストでもなんとか動いている状況です。
北ゼロ度通過時の処理、途中で追尾衛星を変更した時の処理などもう少しテストを繰り返したいと思っています。




posted by ja6irk at 15:07| Comment(2) | TrackBack(0) | QRP-HomeBrew

2022年04月24日

Pocke TATOR 機能追加・性能改善

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長文です。備忘録として投稿します。
最初にPocke TATORの検討を始めたのがいつ頃だったのか忘れてしまって、このBLOGを調べてみたら2020年8月でした。
自分用に検討を始めたのですが、プロト2、プロト3、プロトファイナルと紹介をしていたら、頒布のご要望が出てきて、頒布を開始したのがその年の12月でした。

http://blog.toshnet.com/article/187852481.html
http://blog.toshnet.com/article/188177319.html

約一年半が経過して、当初は430MHzや1.2GHzの軽量ヤギウダアンテナを回すのが目的でしたが、屋根裏での設置事例や、衛星通信(145MHz/435MHz)に使用されたり、ついには衛星通信の自動追尾への要求も出てきたり、衛星やるなら仰角も動かしたいという要望も出てきたりと、それなりにそれぞれが興味深く、対応を検討してきました。衛星の自動追尾は途中からソフト対応しました。

http://blog.toshnet.com/article/188441950.html
http://blog.toshnet.com/article/189143723.html

一方、何か新しいことをやると必ず課題や問題点が出てきます。都度、検討や対策をしてきましたが、なかなか収束せず、時間ばかりが経過してきていました。
そうした中で、何とかあらかたの対応ができたのでバージョンUとして展開することにしました。

まず、課題・問題点を整理します。
(1) アンテナが軽量(1Kg以下)でも、回転角度がズレる。
(2) 衛星自動追尾では、数十度のズレが発生することがある。
(3) モーター軸とアンテナポールのジョイントが3Dプリンタによる樹脂で強度が心配。
(4) 内蔵電池が006P型のため、衛星追尾などでは持たない。
(5) 衛星通信は色々忙しく、操作手順を単純化したい。
(6) マイコンボードやモーター等、価格、輸送費が大幅アップ。

今回の機能アップ・性能改善(改悪も含む)は、
基本は、角度ズレ対策がメインで一番大きな悩みで時間がかかりました。
(1) 回転角度ズレ対策として、基準角度検出スイッチ追加。(ズレても90度おきに補正)
(2) アンテナのイナーシャによるズレ防止のための回転制動機能追加。
(3) モーター軸とアンテナポールジョイントを金属製に変更。
(4) 衛星が可視範囲に入る前に、追尾の予約、AOS in時に自動追尾開始機能追加。
(5) 電池内蔵は無しに。(ケースは薄くなりました)
(6) 少し価格アップしました。(マイコンボードがなくなり次第再アップ?!)

問題・課題の考察と検討経過
一番の悩みは回転角度ズレで、アンテナを載せず本体のみであれば、正確に指定角度まで回転し、ゼロ度に戻せば、正確に戻ってくれます。
小型の軽量なアンテナでも、うまく動いてました。
しかし、430MHzの10エレ(1kgくらい)で衛星追尾するとズレるという報告をいただいてました。
しかも数十度ズレていることがあると。
自動追尾でなく、オートモードで、例えば30度とか50度回した時には、大きくずれていることはないとも。
衛星自動追尾は、2度ずつ回転するので、追尾が終わった時点でズレが累積しているのではないかというコメントもいただきました。
そこでイナーシャに相当するものとして2kGの鉄アレイの重りをブーム(50cm程度:室内での検証のため)の両サイドに取り付けて、2度ずつ回転させズレの発生状況を確認しました。確かにズレますが、数十度もズレることはありません。
一応対策として、回転角度が指定になった時にブレーキをかける、一瞬逆転させるなどの処理を入れてみました。効果はありましたが、逆回転は、イナーシャの少ない状態だと逆に少しづつ戻ってしまい回転角度が足らなくなるという弊害もありました。
ブレーキは効果がありそうなので、それで様子を見ていました。こちらではそれなりにうまく動いていたのですが、現場ではやはりズレるとのことでした。
ズレている様子をビデオに撮って送ってもらうと、回転を止めたときに反動で戻っていて、またその反動で回転方向、逆方向に振動しながら停止している様子が見れました。
ギアモーターにはバックラッシュがあるので、その分の回転ブレがあります。
これがイナーシャによるブレによって倍加されているのではないかと想定できました。
エンコーダーで回転を検出しているのですが、風などによるバックラッシュの分は、回転方向が分からないため誤検出となるので、停止後は検出を停止しています。
この現象は、回転中に意図的に手でアンテナポールを左右に回すとズレが発生し確認することができます。
しかし、鉄アレイの重りでテストした時は大丈夫だったのに何が違うのか?ということですが、ブーム長が1mを超え,1.5mほどになると意外と回転イナーシャが大きそうだと思いました。
試しに、50MHzの3エレのデルタループ(自作、重量は1kg以下)を使って衛星追尾してみました。
確かにズレます。ブーム長は2mあり、重量は軽いのですが、空間容積はかなりあります。
回転停止するときに振動しています。まさに原因はこれであることが分かり、こちらではこのアンテナで効果のある対策をすればOKだと判断しました。
モーターに負荷はかかるけれど、回転を抑えるように制動すれば振動が抑えられ、ズレがなくなるという報告もいただきました。
そこで、Pocke TATORに適用できる構造を検討しました。
出来上がったのが、写真のような構造です。

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本体の天面を5mmのスポンジで、アンテナポールに取り付けた抑えで押付ける構造です。
この構造であれば、これまでのものに改造なく追加できます。
50MHz 3エレデルタループでテストしてみると効果は上々で、繰り返しの追尾テストでも、停止時の振動は抑えられ、ズレはほとんどありません。これが回転振動対策です。

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スポンジが経時的にへこんで効果が薄れても、抑えなおせば効果を維持できます。

次は、ズレたときの補正方法です。
屋根裏設置では、ズレていても時々覗かないとわかりませんし、(カメラを導入していただいているケースもあります)面倒な作業です。
よくダイヤルで使うロータリーエンコーダーを搭載して回転方向も検出する方法とか、VRを使用して回転角をアナログ値で検出する方法などを考えましたが、前者は制御線が増えるのと、コントローラーの基板も変更が必要になります。後者は市販のローテーターで採用されている方法で、最初のプロト1がこの方法でしたが間違って余計に回転させてしまうとVRを破壊してしまうので止めました。
後になって衛星追尾を検討した時、殆どがこのVRの電圧値を使って追尾制御されておりこれでもよかったかな!と思ったりもしましたが。
現在のエンコーダースリットによるパルスカウント方式は、制御線が1本で済むのと、いくらでも回転でき(同軸ケーブルがあるので限界はありますが)、設置の時、北ゼロ度を向けた方向を北ゼロ度と設定できるので楽です。結果として、衛星追尾時に北ゼロ度を通過する衛星パスの時も±180度まで反転することなく衛星追尾が可能になりました。
このメリットを活かしながらの対策として、決まった角度(基準角度)にスイッチを置いてそこを通過した時の角度がマイコンの認識とあっているかどうかを確認して、違っていれば補正する方法を考えました。
問題は制御線の増加です。増やしたくありません。
そこでいただいたアイデアが、アナログ値検出です。パルスを送っている線に、スイッチが入った時にパルス高を変えて、この値を読むことでパルスをカウントしながらスイッチを検出することができます。
制御線は増えずこれまで通りです。運がいいことに、コントローラー側もこれまでの経緯で、このパルスカウントの線は、アナログポートと、割り込みポートの両方につながってました。
コントローラー側のハードの変更は一切ありません。

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本体側のスイッチの取り付けも、検討の経過がありますが、結果としてそれまでの経緯で空いていた穴を流用して位置決めして取り付ける構造にできました。これによって、これまでの本体に追加の穴あけ加工などをせずにスイッチを取り付けることができました。


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最初は、スイッチを押す突起構造は追加部品としたのですが、次の金属ジョイントを使用するためにエンコーダースリットプレートの設計を変更したので、スイッチを押す突起構造と一体化しました。

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基準角度スイッチは、360度で一か所であるのですが、それだと、衛星追尾の時に必ずしもそのスイッチを通過するパスとは限らないので、補正が限られるというコメントもあり、90度ごとに360度で4回角度補正できるようにソフトを合わせて対応しました。これでかなりの確率で衛星パスでの補正が可能になりました。

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基準角度の決定方法ですが、これまでは北ゼロ度にしたい方向で、ボタンを押して設定しましたが、今回は操作方法は同じで、北ゼロ度にしたい方向でボタンを押すと、アンテナは自動回転を始め、基準角度スイッチまで回転します。そのあと、北ゼロ度まで自動的に戻ります。
これによって、北ゼロ度に設定した方向が基準角度スイッチと何度の角度かを認識して記憶します。
よって、このスイッチの角度を通過するたびに、記憶した角度と違いがあれば補正をするという方式です。
最終的にスイッチを押す突起は90度ごとに4か所作り、90度ごとに補正ができる構造としました。
具体的なソフトでは、いくつかの判断基準の幅を作っています。

その次の対策は、モーター軸とアンテナポールを接続するジョイントの金属化です。
これまでは3Dプリンタで製作した樹脂製でした。これで問題は殆どなかったのですが、移動運用で本体を取り付けたマストごと転倒してしまいこのジョイントが破損したケースがありました。
また、重量の大きいアンテナ搭載で大風に何度も吹き付けられ軸を固定するネジが馬鹿になってしまうケースもありました。
特異ではありますが信頼度は上げておきたいと思っていて、いろいろ思案していましたが、軸穴を空ける作業が手作業では精度が出ないので棚上げになっていました。
そうした中で、6mmのネジ穴が元々あいている高ナットが使えそうだと思い試作をやってみたら、6mmのネジ穴を6mmのドリルで開けることによってセンターが取れ、モーター軸にピッタリ嵌まることが確認できました。
モーター軸、アルミのアンテナポールを固定する横ネジの加工は必要ですが、ボール盤とタップで何とか加工可能でした。

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これまでは、電子工作と3Dプリントした樹脂の加工がメインでしたが、ついに鉄という金属加工までやることになり、いい意味では幅が広がりました。悪い意味では、切削油をかけてのボール盤作業となり、室内がついに金属加工作業場となってしまいました。
しかし、これで懸案のジョイントも解決しました。

次は、衛星追尾スタートの方法です。当局も、初心者ながら衛星通信をやりましたが、パスは5分から20分と短く、ループテストで送受信周波数合わせ、実際にはドップラー効果による周波数変動への対応など結構忙しいです。
アンテナの追尾はスタートしてしまえば自動になるので便利なのですが、衛星が視野範囲に入る前にやることが多くて衛星の自動追尾スタートを忘れてしまうことも多々ありました。
そこで自動追尾したい衛星を決めたら、視野範囲に入る前でもスタートボタンを押すことによって、その時点での衛星の方向に自動回転し、そのあと待機、その衛星が視野範囲に入った時点で自動追尾スタートする機能をソフトに入れ込みました。
勿論、衛星が範囲から外れたときには追尾も自動停止します。
このソフトの検証は、それに対応した衛星パスを見つけてのテストで結構時間がかかりました。
例えば、北ゼロ度通過前に待機した時、スタートが通過後だった時どういう挙動になるのか?
追尾中にほかの衛星に切り替えたらどうなるか? 待機中に切り替えたらとか!
漏れがあるかもしれませんが、一応それなりに動いているようです。

電池内蔵の件は、アンテナを回すモーターを回していますからそれほど持たないのはわかっていましたが、手動で動かす分には使いではあるかと!内蔵できるようにしていました。
しかし、衛星追尾となるとずっと動いていますのでまったく持ちません。
電池の場合もDCジャック端子接続で対応はできますし、今回外しました。
これによりケースの高さ方向は薄くなりスマートになっています。

最後に、製作コストですが、ギアモーターを始め主要部品は中国から調達しています。
理由は、こうした部品は中国が世界的に主力供給元となっており、価格も安いからです。
それによって低価格で作れていました。
しかし、最近では、中国調達よりAMAZONの在庫品が安いという逆転現象まで出てきています。
理由は色々あるのでしょうが、コロナの要因も一つ、半導体の世界的な供給不足は社会問題になっています。それに加え、ウクライナ問題、大幅な円安。原油高、中国調達の輸送コストも上がっています。
使用しているマイコンボードに至っては、3倍以上、調達することも危うい状況です。
マイコンを変えるとなるとソフトの書き直し、基板の変更など手間と時間とリスクを伴います。
現時点での手持ちマイコンボードの数も数えるほどですので、なくなり次第コストアップもやむを得ないかと考えてます。基板変更もありそうなので悩みは多いです。
今回は、モーターコスト、送料などのコストアップを反映せざるを得ませんでした。
すみません。

仰角対応の要望もあり、プロトもいくつか作って動作はしていますが、上記悩みの対応でその後進んでいないのが現状です。

http://blog.toshnet.com/article/189143723.html

実働で動いているのは2台のみです。
懸案の課題も対応が見えましたので、仰角付きもこの後進めたいと思います。

最後に、種々テスト、ご提案をいただきました、JK1LSE OM殿に深謝いたします。










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2022年01月28日

145/435 クロスヤギウダ性能評価

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昨年、JK1LSE OM殿の設計監修にて145 4エレ、435 8エレのヤギウダアンテナを作成し、その性能評価を行い、実際には、Pocke ELETATOR(仰角付きローテーター)の試作品に搭載して初心者ながら衛星通信を楽しんでおりました。

http://blog.toshnet.com/article/189101335.html
http://blog.toshnet.com/article/189143723.html

そうした中で、Pocke TATOR(方向角のみ)にクロスヤギウダアンテナを、仰角15度〜20度に固定して搭載して楽しんでおられる方もいらっしゃり(JK1LSE OMも屋根裏設置は同じ設定)、前回も4エレ、8エレで実験はしたものの、実際の設置には1mというブーム長の制限で設置しにくいという問題もあったので、1mブーム長の制約の中で設置しやすい、かつ軽量なクロスヤギウダアンテナを作ってみることにしました。
今回も設計監修は、JK1LSE OMにお願いしました。

結論から言うと、設計値としては、145 3エレは前回の4エレよりも若干(約1dB弱 利得アップ)良くなり、435 6エレは前回の8エレとほぼ同等の性能が得られました。
下図上段が今回の145 3エレ、435 6エレのシミュレーション値、下段が前回の145 4エレ、435 8エレのシミュレーション値です。

145_3ele特性.jpg   435_6ele特性.jpg

MMANA144.jpg   MMANA433.jpg

前回の評価では、シミュレーション値との比較において利得はほぼ同等、パターン図は測定環境の影響もありながら傾向は取れていたのかな?というのが結論でした。
今回も同様な結果が得られているであろうとの期待をしながら、実際にどのような性能が得られたのか、前回同様にパターンと利得の相対比較(ダイヤモンド製5エレ、10エレ)を行ってみました。

IMG_0591.JPG   IMG_0590.JPG
測定の様子。

下図は左が今回の145 3エレ、右がダイヤモンド製5エレです。
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なんと、今回はダイヤモンド製5エレとの比較で2dBの利得アップとなっています。
(パターン図は0dBで正規化)
前回は、ほぼ同じ性能値(シミュレーション値とカタログ値)で同じ相対結果でしたが、今回シミュレーション値約1dBアップに対して2dB良い結果となりました。(つまり4エレより良い)
パターン図ですが、今回はFB比がかなり悪くなっています。特にダイヤモンド製は4dBしか取れていません。(前回も10dB程度ではありましたが)
今回製作の3エレも10dBと前回の約20dBに対して悪化しています。
この要因として考えられるのは、マストの影響です。前回は、マストの影響を考慮してマストからブームを張り出して、そこにアンテナを固定測定したのですが、実際の仕様を考えマストにほぼ直結する形で固定して測定しました。おそらくこの影響が出ているものと思われます。
(実際には、145MHzは水平にして使用するので本当は水平偏波で測定すべだったかもしれません)

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次の図は、435MHzです。こちらは、ダイヤモンド製と同じ利得となっています。
前回の比較では、8エレが約-1dBでしたので、6エレの方が1dBアップしたことになります。
パターン図は前回と同様の傾向が得られたかなと思います。435はエレメントが短く、マストにかぶらないので影響が出にくかったのではないかと思っています。

今回の測定は、ダイヤモンド製はそれぞれ独立した状態、自作の方はクロスに実装した状態で145・435で水平垂直を設置しなおして測定しました(測定はどちらも垂直)。
理由は、クロスした状態での互いの影響を加味した性能を見たかったからです。

結論として、前回の4エレ(145)、8エレ(435)に対して、今回は3エレ(145)で2dBアップ、6エレ(435)で1dBアップの性能となりました。
重量も、マストクランプ(15度/20度傾斜付き)を含めて、実測350gときわめて軽量に作ることができました。
めでたしめでたしです。
当局の環境における測定もほぼ再現性が取れているかなと!実感することもできました。
4エレ、8エレより、3エレ、6エレの方が良い利得となった結果については、ブーム長1mという制約の中での設計が難しかったということではないかと感じております。
それぞれ単独での性能は、測定しませんでしたが、前回の結果からほぼ同等であると思っております。

実際の衛星通信での使用においても、仰角固定であることから天頂通過時は厳しいものがありますが、概ね快調に動作してくれているかなと感じております。

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2022年01月07日

Pocke DecoKeyer完成!

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年末にFRISKサイズのキーヤーPocke KeyerUにLCD表示ををつけ、結果的に外部マイコンも付加してCW解読機能も搭載した実験を行いましたが、注文していた基板、その他の部品も到着し、いつもの3Dプリンタによるケースも製作して、一応 CW解読機能付きK3NGソフト搭載キーヤーが形になりました。
名前は、デコーダー付きキーヤーと言うことで、
Pocke DecoKeyer にしました。

実験途中の様子は以下の記事です。

http://blog.toshnet.com/article/189219626.html

キーヤーの基本機能としては、Pocke KeyerUと同じでK3NGキーヤーがベースですが、大きく変わったのは、

@ Goertzelアルゴリズムによる OH1JHM OM作成の
  解読ソフトを搭載
A LCD表示器を搭載
(CW解読のみならずK3NGキーヤー操作での機能表示を含む)
B キーヤー出力は、2系統搭載(いずれかの選択が可能)
C キーヤー出力、CW解読のための音声入力部は接続リグとの
  アースを分離絶縁
D CW解読用にマイクも搭載
 (ミニジャック挿入で外部入力に切替)
E スラント型ケースでLCDの視認性、ボタンの操作性をアップ
 (苦肉の構造ですが)
F スリープ機能は非搭載
 (これはデグレードです)

大きさもFRISKサイズのPocke KeyerUとの比較においてもコンパクトに仕上がったかな?!と思っています。

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プログラムメモリー量の関係で、スリープ機能が入らなかったのでが残念ですが、その分電池は単4型を搭載するようにしたので少しは持つかと思っています。消費電流は、約10mA〜12mAですので消し忘れは禁物です。
一応消し忘れ防止用に、電源ON時のLED表示も付けました。
(これも余計な電流を消費しますが)
現在、電源ONしっぱなしで何日(何時間!)持つのかテスト中です。
CW解読機能は、先日の記事にも書きましたが、完璧はないです。
しかし、PCでのタイプCWやエレキーでの信号はノイズの中でも比較的的確にデコードできています。
バグキーとか、縦振電鍵のような長短点差の大きいもの、揺らぎのある信号はとたんにデコード率が下がるようです。
人間の耳では、解読できるのですがね!(当局の耳より優秀ですが)
キーヤーのおまけとして補助的についていると思えば、いいのではないかと思いますし、送信の練習用には最適ではないかと思います。
関西から関東に出てきて約9年が経過し(一次2年間の大阪単身も含む)、タイミング的にデジタルが流行りだし、ほとんどがデジタルモードでの運用に変わってしまい、CWの運用が殆どなくなって受信力が大幅に低下してしまっておりますが、これを機にまたCW運用に少しは励もうかと考えております。

素晴らしいキーヤーソフトを開発された、K3NG OM そして解読ソフトを開発された OH1JHM OMに感謝申し上げます。

※ と、記事を書いてるうちに電池が消耗しました。つけっぱなしで時々出力して、約32時間でした。
 使用した電池は、USBで充電できる単四型1.5Vのリチウムイオン電池です。元がおそらく3.7Vからの降圧ですから、消耗までずっと3Vを維持してくれますが、消耗すると突然電圧が下がる仕様です。
 この電池の仕様の詳細は別として、容量は550mWhとなっていますので、1.5Vだと約360mAh、12mAの消費だと計算上は30.5時間ということになりほぼ電池の持つ仕様通りの寿命と言うことになります。
 この時間を長いと考えるか短いと考えるかですが、当局的にはこんなものかと思っております。
 アルカリ電池だともう少し容量の大きいものもあるようですが、初期電圧に対して、使い始めると急激に電圧が下がるようなので、回路的に定電圧化しないで使用していて、LCDのコントラストは早い時間に悪くなるのではないかと危惧しています。
 そこで最近見つけたUSBで充電できる単4型のリチウムイオン電池を使ってみました。
 消耗したと気づいた2時間ほど前までは、表示のコントラストに問題がなく3Vは維持していました。コントラストがなくなって気づいたのですが、その時の電圧は2.6Vくらいでした。
 1本約550円と高いのですが。仕様上は1200回くらいまで充電できるとあり、半分だとしても1本1円相当になるので結果的にはとても安いかと!勝手に考えています。

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こんな感じで充電します。通常のUSB電源が使えるのとType-CのUSBケーブルが使えるのが便利です。
蛇足でした。

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2022年01月01日

今年最初の作品(Pocke SatDial)

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大晦日にエッチングして基板を作った衛星通信用リグコントローラー操作用マウスの代替えダイヤルアダプターですが、昨晩のうちに何とかケースのプロト1までできたものの、やはり問題が多く、正月早々ではありましたが、駅伝を見ながらプロト2を作ってみました。
昨晩は、ダイヤルノブに手持ちのものを使用していましたが、今日はこれも3Dプリンタで製作しました。
結果は上々で、特にダイヤルノブはこれまでに作ったものの中で最も良い出来となりました。
ケースとしても、プロト1より、5mmほど薄くなり、裏蓋も製作して、コンパクトな完成品となりました。

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電源はUSBケーブル経由でPCからとれるので必要なく、マイコンボードにXiaoを使用したのでPCとはType-CのUSBケーブルでの接続となります。

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大きさのイメージは、FRISKサイズキーヤーとの比較が左、手のひらに乗せたのが右です。
ダイヤルノブの直径は40mmです。

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ケースは、手持ちのフィラメントがこれしかなかったのでオールグリーンの愛想のない配色ですが、これはこれで良しとします。
短期間で思った以上のものができて、自画自賛です。
今年は、良いスタートができました。

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謹賀新年!

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2021年12月31日

今年最後の製作物

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早いものですね! もう一年が過ぎて大晦日になってしまいました。
この一年も大変お世話になりました
9月からは、隠居生活となり、曜日もわからないような生活を送っておりましたが、ボチボチと自作や通信を楽しんでおりました。
今年は、仰角ローテーターもだいぶ形が見えてきて、
http://blog.toshnet.com/article/189143723.html

JK1LSE 本田OM殿には設計、監修をいただき、実用的な 2mの4エレ、70cmの8エレも作ることができました。
http://blog.toshnet.com/article/189101335.html

製作してだいぶ時間がたってしまっていたFRISKサイズキーヤーもK3NG OM殿製作のソフトを載せてPocke Keyerとしてリニューアルできました。
http://blog.toshnet.com/article/189083361.html

当局的な、今年最大のイベントは、衛星通信を始めたことだと思います。
衛星通信そのものは、大昔より先輩方々が開拓されその歴史は古いのですが、当局はやったことがありませんでした。
機会があって、ローテーターを作ったり、ご要望があり仰角も回せるようにし、衛星軌道ソフトのデータを活用した自動追尾機能も実現できました。
アンテナもできたことで環境が整ったわけで、自分自身がやらないわけにはいきません。
と言うことで始めたばかりの初心者ですが、お相手をいただいた局長さん方々には御礼を申し上げます。
当局の運用スタイルは、衛星に限らず、自分でCQを出すことは殆どなく、CQを出されている局を呼びまわるという形です。
そうなると、衛星通信の場合、PC上のリグコントローラーで周波数を可変させることになります。
操作は、マウスと、マウスのボタンです。
実際に使ってみて、運用が不慣れなうえにマウスで周波数を変えてゆくという操作には馴染めず、通常のリグのようにダイヤルを回して周波数を変えることができないか考えるようになりました。
と言っても、リグコントローラーのソフトをいじるなんてできませんし、暫く考えて、マウスの代わりにロータリーエンコーダーを回して代替えできないか考えてみました。
いつも使っているArduinoでは、マウスやキーボードアプリ例がありますのでこれを使ったら何とかなるだろうと始めて見ました。これに使えるArduinoボードがなかったのでアマゾンに注文したのですが、そのあと色々調べていたら手持ちの Xiaoが使えることがわかってアマゾンから品物が来るより先に始めました。
前置きが長くなりましたが、何とかマウス代替えのリグコン操作ダイヤルができました
そこそこ使えそうだったので、今年最後の基板エッチングをして長く使えるように組み上げました。

IMG_0404.JPG

ケースはまだですが、いつもの3Dプリンタで作ろうと思っています。
操作は、リグコンの周波数アップダウンボタンにカーソルをダイヤルを回して移動させ、その位置を覚えさせてしまえば、あとは、ダイヤルを回せば周波数がアップダウンするという仕組みです。

Sat画面.jpg

リグコンは、CtrlやShiftボタンを押して操作することによって可変ステップを切り替えることができるようになっており、これも操作ダイヤルにスイッチを搭載して、キーボードのCtrlやShiftキーと同じ機能を搭載しました。押しながらだとダイヤル操作がしにくいので、トグル動作にしています。
実戦に投入してみましたが、なかなか使い易いと自画自賛しています。
時々、USB通信がフリーズしてしまって操作ができなくなるのですが、この原因究明はまだできていません。
リグコンのボタンの位置は、フラッシュに記憶させるようにしたので、USBを抜き差しすればすぐに継続して使用できるのでとりあえずは何とか使えそうです。
2021年の自作はこれが最終作品となります。

来年も宜しくお願いいたします



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2021年12月22日

Pocke KeyerUに表示をつけてみた!

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 FRISKサイズキーヤーの第二世代キーヤーである Pocke KeyerU は、そのソフトにK3NGキーヤーを搭載したことによって様々な機能が実現できており、とても便利になりました。
お陰様で頒布の方もコンスタントにご注文をいただき大変嬉しく思っております。
第一世代でご要望の多かったケース付きにしたことも功を奏しているかと思います。
 しかし、FRISKサイズという小さく作ることを目的としたため、K3NGの多くの機能を活かすに至っていませんでした。マイコンのメモリー量の制約もあります。
 今回、その中でも簡単に実現できそうな機能として液晶表示があり、その実験をやってみました。
オリジナルはパラレル接続の液晶が選択されており、多くのピンを必要としますが、そこはI2C接続の液晶を接続するためのソフトも何種類か用意されており、当局が保有する液晶にぴったりの物はありませんでしたが、似たようなソフトを書き換えて対応できました。
 Pocke KeyerUと液晶の接続は、I2Cの2本と、電源とGNDの4本のみです。
液晶は、秋月さんで売っているものが手持ちにあったのでそれを使用しました。

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 それで何が表示されるかというと、スピードVRを変えた時のスピード表示(wpm)、コマンドボタンを押した時の Command Mode という表示、コマンドを入力した時のコマンド名の表示と、設定した内容、キー入力した文字表示等です。
便利と言えば便利ではありますが、表示があるからできる新しい機能とかは特にありませんでした。
(見つけきれてないだけかもしれませんが)
使い慣れてしまえばなくても困るものではありませんでした。(最初からなしで使用していますが)
 ふと思ったのは、キー入力した文字が表示されるということはキー入力文字の認識機能があるということであり、CW解読器(CW DECODER)が作れるのではないかと言うことです。
 サイト検索をしながら、ソースコードを見ていると、やはりありました。
2つの CW DECODE機能が用意されていました。 一つは、単純にCWの長点短点のON/OFF信号を取り込んで、入力された文字の表示をするというものです。この入力に、縦触れ電鍵の信号、またはもう一つのエレキーの出力をつないで文字入力すると、入力した文字が表示されます。しかし、それなりの実用的なものにしようとすると、この信号はトーンデコーダー等を使って綺麗なCW信号にして入力する必要があります。
 実は、当局も20年ほど前にPICを使用してここまでは作ったことがあり、前段にはトーンデコーダーを使用していましたが、実際には使用に耐えるものではありませんでした。
当局的には、それでお仕舞になっていたのですが、今回のソースコードにはもう一つのDECODE機能がありました。
それは Goertzelアルゴリズム というものを使ったマイコンでのDSP処理によってCWを解読させるもののようでした。このアルゴリズムを理解する能力は持ち合わせていないのですが、このアルゴリズムを用いたCE DECODERのオリジナルは、下記のサイトで紹介されています。
http://skovholm.com/cwdecoder
これもArduinoのソフトとして作成されており、当局的には試しやすい環境にありました。
最初は、K3NGキーヤーにそのまま取り込んで機能実現できないかやってみようとしましたが、プログラム量が増えすぎて、メモリーに入りませんでした。
回路的には、アナログポートをバイアスしてCWのオーディオ信号を入力するだけであり、実験は簡単にできそうだったので、Pocke KeyerUに液晶を接続した状態で、このデコーダーソフトのみを書き込んでやってみました。
実際に受信したCW信号をデコードしてみると意外とうまく解読してくれています。


アナログポートに適当な信号を入れてみた状態です。

気をよくして、何とかプログラムが入らないかやってみましたがあと少しの所で入りませんでした。
かといって、キーヤーとデコーダーが別物だと使い勝手が良くないですし、DSP処理でコード率が高くなっているといっても完全に実用的なものとは言えないだろうし、やはりキーヤーにデコーダーが補助的に入っている的なものとして一体型にしたいしと検討してみました。
 マイコンは、同じATMega328を搭載したのでは物理的にも脳がありません。そこで8ピンのATTiny85あたりが使えないかやってみました。
まず最初にやったのは、ATTiny85だけでデコーダー機能が動作するかの実験です。ポートが8ピンしかありませんのでI2Cを使用して液晶を接続し、かつ内部クロック(8MHzですが)を使用してデコーダー機能を試してみます。これは、何とかうまくいきました。
しかし、内部クロックは8MHzでオリジナルは外部クロックとして16MHzが使用されています。CW信号のサンプリング周波数は8KHz台が設定されており、クロックを8MHzとしたときのデコード率がどうなるかは想定できなかったので、外部クロック16MHzを使用することにしました。この時点でポートが足らなくなるのですが、デコードしたCW長短点の信号を出力する機能があります。この信号を、先のK3NGキーヤーの最初に記述したCWデコード入力ポートに入れることによってK3NGキーヤーの液晶に表示できないかやってみました。
ピンポンです。
8ピンのATTiny85マイコンをDSP処理によるCWデコード専用機能としてトンツー信号をK3NGキーヤーに入力してデコード文字をうまく表示させることができました。
これで、完全シンプルとはいえないまでも、シンプルな一体型デコーダーキーヤーが作れそうだと言うことがわかり、完成形を目指すこととしました。
 せっかく作るので、もう少しだけK3NGキーヤーの機能を活かしたいと思い、出力は2つとして切り替えて使用できるようにしました。2台にリグに接続できるようにするのと、CWのオーディオ信号も取り込むので、オーディオ側は絶縁トランスCW出力はフォトカプラを使用してアースを分離した設計としました。
また、マイクでもCW信号が拾えるようにコンデンサマイクとマイクアンプも内蔵としました。
リグからの信号を入力するジャックを抜くとマイクに切り替わる使い方です。
 Pocke KeyerUで搭載したスリープ機能ですが残念ながらメモリ量の関係で入りませんでしたので、電源としては、単4乾電池2本としました。単3型のリチウムイオン電池だと1本で済むのですが、入手性と充電の問題があるので汎用的なものとしました。
 それで出来上がったプロトが下の写真です。Pocke KeyerUと比較しています。

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電池は裏側に背負ってます。
入力されたオーディオ信号は、DSPで処理されているのでいらないのかもしれませんが、パルス性のノイズが入ると、E,E,Eとデコードされてしまうので、効くかどうかわかりませんでしたが一応LCのBPFを入れています。
また、入力するCWのトーン周波数はマイコンであらかじめ設定する必要があるので、558Hzと744Hzを選択できるようにしました。これは電源ON時にのみ選択されます。LC BPFのセンター周波数も同時に切り替えることができます。

こうして、出来上がった一体型 デコーダーキーヤーのプロトでデコードしている様子が以下です。


コールサインがそのまま表示されてますが、クラブ局ということでご了承を!

FT-817の上にのせてスピーカー出力をマイクで拾ってデコードしたのが下の映像です。


ほぼ同じようにデコードできています。

CWの解読器は過去から色々販売されたりしています。
(自分で作ったのを含めて)最近のリグでは搭載されているのもありますし、キットではQCXにも搭載されています。
しかし、これは凄いという完全なものはないのかなと思っています。
今回の検索で一番参考になったのは、いつも検索で見つかり参考にさせてもらっていることが多い JH1LHV OMの記事です。2015年の記事ですからもう6年も前に試されています。
その後も、ずっと継続してやられており、とても参考になりました。
ありがとうございました。
OMも書かれていますが、万能なCW DECODERはないということです。当局もそう思っています。
しかし補助的に使うとか、送信の練習に使うとか、使い方次第ではないかと。
最近のAI技術を駆使すれば、会話の認識の向上が著しい昨今ですからこれまでよりさらに進歩したデコーダーが出てくるかもしれません。それを楽しみにしながら、とりあえず小さなマイコンの組み合わせでできるCW デコーダーキーヤーを作ってみました。(Pocke DecoKeyer)

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2021年11月18日

Pocke ELETATOR その後

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プロト3

衛星追尾に使用できそうなV/Uの八木宇田アンテナもでき、やっと仰角ローテーターの完成に向けステップを進めようかと動き始めました。
その途中がなかったわけではないのですが、144MHz用と430MHz用のビームアンテナを回すとなると、仰角ローテーターを含めてそれなりの重量になり、今のローテーター「Pocke TATOR」だと何回か回している間にイナーシャで角度がズレてしまうという問題があって、これは仰角対応のみではなくて、方向角のみのアンテナでもアンテナの重量や取り付け方で同様の問題が指摘されその対策をやっておりました。
また、仰角側も二次プロトを製作し、ローカルのOMさんに試験をお願いして使ってもらっていました。
こちらも構造上多くの3Dプリントした部品を使っていましたが、弱いところも多く、今一つこの構造で進める自信がありませんでした。
そうするうちに時間が過ぎてしまったわけですが、これまでの構造に拘らずに、まず使用に耐えられる強度を確保しようと設計をやり直しました。
それでできたのが、最初の写真のプロト3です。
因みにこれまでの変遷は、下記の写真の通りです。

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プロト1
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プロト2

仰角部の外装を3Dプリント品で構成していたので、この部品1個だけで10時間以上の時間がかかったのと、強度的にもちょっと弱いかな?!と、他のカバーなどを含めると丸2日間プリントしっぱなしとなり、今一つ気乗りがしませんでした。
また、方向角部との連結部分も2個のアンテナをそれなりのブーム長で搭載すると左右の上下の揺れに対して、ユラユラするところがあり、なんとなくひ弱な感じがして、風が吹くと結構揺れてこれも心配の種でした。

そこで、今回のプロト3では、仰角部の基本構造を方向角と同じ塩ビ管を使用し、減速ギアも中に取り込んでこれまでのギアカバー等の部品も減らしました。
これまでは、1:4のギア比でしたが、このままでは塩ビ管の径が大きくなりすぎるので1:3でギアの設計を行い、何とかVU75サイズ(直径約89mm)入れることができました。

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ただし、ギア比が1:3だとステップでの回転角が中途半端になるのと、これまでのエンコーダースリットでは径も大きいので、これも設計をやり直し、スリット数を90から60に減らして、径を小さくするとともに、倍カウントで1度ステップ、通常カウントでも2度ステップになるようにしています。
それで出来上がった仰角ローテーターが次の写真です。

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アンテナを回転させるブームが短くなっていますが、これは輸送対策です。
1m程度のブームがついた状態だと、140サイズ以上の大きさとなり輸送コストがかさみます。
そこで、本体側のブームシャフトは短くし、延長ブームシャフトを左右別々に連結するようにしました。
これでコンパクトに梱包することができます。(苦肉の策です)

次は、方向角ローテーターとの連結部分です。
これまでは、下の写真のような方向角ローテーターからの回転シャフト(径25mm)を差し込んで、ネジ固定し、一応方向角ローテーターの上面で受けるかたちで結合させていました。
しかし、これでは前述のように左右の上下の揺れに耐えられませんでした。

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そこで構造的に、まず回転径を大きくして、更に方向角側と仰角側の連結部の接触距離を増やして左右の上下の揺れを軽減する構造としました。更に、上下の浮が発生しないように、裏側より挟み込む構造としてよりユラユラの発生の軽減化を図りました。

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こうした構造にすることの問題点もあります。摩擦です。
方向角ローテーターの回転力では、通常は大丈夫としても風などによる圧力で回転できなくなるのではないかという懸念もありました。これまでのアンテナの回転イナーシャで回転角がズレるという問題もありましたし、小型のアンテナを一基のみ回すのなら問題はなかったと思うのですが、重量のある仰角ローテーターとさらに2基のアンテナを回すとなると、少しでも回転力を上げた方が良いのではないかと考え、方向角ローテーターも、同じ1:3のギアを追加し専用設計となるようにしました。
同じギア比にすることによって、ギアモーターを乗せるモーターベースや、ギア、エンコーダースリットなど部品の共通化も図ることができました。
1:3ギア追加により、方向角回転は1回転70秒以上かかりますが。
こうしてできたのが、プロト3です。

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コントローラーは、プロト1で作ったもののソフト変更(回転方向、ギア比での回転角)を行って、とりあえずの試験には耐えております。
(まだまだバグや検討事項がたくさんありますが)

この状態で、V/Uの使えるアンテナもできているので衛星自動追尾を行い、サテライト通信デビューも果たすことができました。


10倍速のデモモードにて、自動追尾

今後はこれをベースに詰めていきたいと思います。



posted by ja6irk at 14:59| Comment(3) | TrackBack(0) | QRP-HomeBrew

2021年10月30日

V/Uヤギアンテナの製作

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構想から2年以上が経過してもなかなか手も回らず完成できなかったV/U用の八木宇田アンテナが日の目を見ることになりました。
今回は、コンテスターであり、最近は衛星通信でもアクティブに運用されているJK1LSE 本田OM(AKCメンバーでもあります)に設計・監修をお願いし、コラボ開発と言うことで比較的短期間でここまで追い込むことができました。
本田OMは、コンテストや移動運用、また衛星通信用として既に開発され自作されたアンテナを使用されていますが、これをベースに、当局が以前より持っていたコンセプト
@ 1mブーム長(ホームセンターで容易に手に入る)
A 穴あけ加工しない
 (加工が下手でエレメントがきれいに並ばないので)
B とにかく軽くする
を実現すべく、ご協力をお願いしダイレクトメールを駆使しながら何とか使えそうで再現性のあるものができました。
ここまででほぼ目途が立ったものは
@ 430MHz 8エレ
A 144Mz 4エレ
です。
移動用として軽く、簡単に組み立てられるもの、また、衛星通信用として開発中の仰角ローテーターでも簡単に回すことができるものとして使用することが可能です。

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まず、@ を実現するブームとしては10mm角x1mのアルミ角パイプを使用しました。
これに、A の穴加工をしないで簡単に取り付ける方法として3Dプリンタを使用してエレメントホルダーを作成しました。

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ホルダーには、ナットがインサートされており、ユリヤネジを使って10mm角パイプの任意の位置で固定することが可能です。角パイプですのでエレメントはきれいに並びます。

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ブームマウント用のホルダーも3Dプリンタを使用してブームの任意の位置で固定できるようにしました。

次は、給電部分です。最初は、シンプルに同軸直結でマッチングが取れるように設計をお願いしましたが、できるにはできるのですが、少々パターンがいびつになり、本田OMの実績のあるガンママッチを使うことにしました。マッチングロッドの固定や、ショートバーをどういう構造にするか悩みましたが、これも3Dプリンタを活用し、それなりに良いものができました。
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最初ショートバーとして10mm角の角棒を使用しましたが、少々大きいので、最終的には5mmx10mmの角棒を使用することにしました。
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ラジエーターエレメントとの接続部分には圧着端子をナットで絞めて、その端を半田付けする構造だったのですが、マッチング用のコンデンサーも含めて取付のバラツキを減らすために、基板を作って、それに半田付けする構造としました。
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このラジエーターもブームの任意の位置にユリヤネジで固定することができます。
マッチング用のコンデンサーには、50V耐圧のチップコンデンサを使用してみました。
最終的にこれでいいのかもう少しテストが必要ですが、50W入力でも特に変化は見られませんでした。

こうして出来上がったのが最初の写真のアンテナです。
B とにかく軽くする
この3つのコンセプトの最後の重量ですが、144 4エレ、430 8エレ共に、ブームマウントホルダを含めて260g程度に収まりました。とても軽量に出来上がったと思います。

とりあえず形はできましたが、所望の性能が得られているのか? とても気になるところです。
利得もそうですし、ビームパターンも気になります。
設計は、MMANAで行われており、144 4エレ、430 8エレの設計性能(利得、FB比、パターン)を下に示します。
MMANA144.jpg   MMANA433.jpg

これらの性能が実現できているかの確認は、測定してみるしかありません。
電波暗室があるわけではないので、一応ルーフバルコニーではありますが、マンションの壁や屋根、隣のマンションの反射などが想定され満足な測定ができるのかわかりませんでしたが、やってみることにしました。
パターンの測定は、当局が製作したPocke TATORを使用してアンテナを回転させますが、10度おきでいいだろうと思ってみたものの、毎回10度ずつ回転させてレベルを測ってという作業はとても大変です。
更に再現性のあるレベル測定が必要ですので、ちょっとした治具(ツール)を作ることにしました。
@ レベル測定
 (AD8307を使いダイナミックレンジ70dBを確保)
A 回転制御
 (Pocke TATORを自動で10度ずつ360度回転させるプログラムを追加)
B 信号源制御
 (10度おきにリグのCWモードで短時間キーON自動制御プログラム追加)
C データの記録
 (マイコンのEEPROMに10度毎に測定したレベルを書き込み制御)
D データの読出
 (UP/DOWNボタンで10度毎のEEPROMのデータを読み出し、LCD表示)
これらを実現することで、360度のパターン測定が自動化されとても重宝しました。
記録したデータをシリアルでPCに掃き出して、エクセルなどでグラフ化すればもっと楽になるのでしょうが、ここまでやっていると何を開発しているのかわからなくなる(とてもできないが本音)ので、10度毎のレベルデータの読みながら手書きで円グラフを作成しました。

IMG_0172.JPG   IMG_0173.JPG
レベル測定のためのAD8307の回路、リグのキーON制御ともに、Pocke TATORのコントローラーの中に仕込みました。

まずマッチングの状況ですが、こんな感じです。nanoVNAで測定しました。SWR計でも帯域内1.5以下に収まっています。
IMG_0124.JPG   IMG_0125.JPG
144MHz 4エレ          430MHz 8エレ

次にパターン図です。

IMG_0177.JPG   IMG_0176.JPG
144MHz 4エレ          430MHz 8エレ

いびつに見えるかもしれませんが、マンションなどの反射の影響なども相当なレベルであると思いますので、それを差し引けばMMANAのシミュレーション結果の傾向はよく出ていると思います。
メインローブの雰囲気とか、サイドローブの出方とか、FB比もしっかりとれています。
角度の正規化を行っていませんので、頭を30〜40度左に傾けてみてください。
実際には、何度も条件を変えて測定して周りの影響の少ない条件が見つかり、その結果を掲載しています。
ここまでのパターン図が掲載されている事例は少ないかと思います。
ちなみに、メーカー製 ダイヤモンド社の144 5エレ、430 10エレを同じ条件で測定したパターン図を下に示します。

IMG_0179.JPG   IMG_0178.JPG
144MHz 5エレ          430MHz 10エレ

次は利得です。
一般的にダイポールと比較されますので、比較用ダイポール(だいぶ以前に作っていた)とレベル比較してみました。また、ダイヤモンド社のカタログ値はわかっていますので、それと比較してみました。

性能比較.jpg

アンテナとダイポールの測定レベルは絶対値ではなく相対レベルとしてみてください。
まず、ダイポールとの比較ですが、144MHzで6dB、430MHzで本機が9dB、D社製が10dBとなっています。
それぞれ、MMANAシミュレーション値、カタログ値に対して約1dB低い結果となっています。
この辺りの違いの要因は、詳細は不明ですが、送受信の測定距離が十分遠方となっていないことなどが考えられるかもしれません。
D社のカタログ値を正としてみてみると、144で同レベル、430で1dBの差となっており、シミュレーション性能が出ていることになります。
FB比はカタログ値が遠慮して記載されているのか、本機の方がシミュレーション値、実測値(パターン図参照)からも良い値となっています。
結果として、利得、FB比、パターン図ともに、当初の期待値を満足している結果が得られたと思います。

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比較測定したアンテナ群

IMG_0143.JPG   IMG_0144.JPG
ダイポールでの測定状況

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パターン図測定状況 
送信側:モービルホイップ 受信側:測定アンテナ

結果として、当初の3つのコンセプトを満足する2種類のアンテナが完成しました。
性能測定用のツールもでき、メーカー製との比較、ダイポールとの比較において、性能の期待値もほぼ満足する測定結果が得られ、再現性のおいても430MHz 8エレは2号機も製作し同様の測定を行って同様の結果がえられ、再現性の確認もできました。

今回は、設計・監修としてJK1LSE 本田OM絶大なる支援をいただき、感謝申し上げます。

追記:
衛星通信用として、144と430をクロスに配置したヤギを見かけます。
今回の2つのヤギをクロスにしたらどうなるか、やってみました。ユリヤネジで簡単に、好きな位置に固定できる構造が幸いして、簡単に組み立て、測定を行うことができました。

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左が144MHz 4エレ、右が430 8エレをそれぞれ垂直にして測定したものです。
ほぼほぼ同様な結果が得られ、クロスにしても使用できることがわかりました。
エレメントの位置を、マジックなどで印をつけておけばばらした状態で保管持ち運びが可能で、現地では印に合わせてエレメントを配置しユリヤネジを締めるだけで簡単に組み立てることができます。
追記に記載したように各バンド単独でも、1本のブームでクロスとして使用することもできます。














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